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ダリア・メス。ダルメシアン 。
血統書によれば1991年8月3日がダリアの誕生日だ。そして2005年11月15日に14年と3ヶ月の生涯を閉じた。私が33歳の時に我が家の一員になった犬。一言で14年と言うが、その間に私達家族にはいったいどれ程の事件、変化があっただろう。小学生だった娘は成人し、幼稚園児だった息子も大学受験を控えるまでに成長した。私も離婚と再婚と転職を経験し、14年前の自分とは別
人ではないかと思えるほどの隔たりを感じる。それ程の月日を供に過ごした犬だ。人生の一時期を併走してくれたパートナー犬だった。
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加齢故の衰えは感じながらも命尽きるような予感は全く無く、ダリアの死は私達にとって全く突然だった。しかし後で知れば、ダリアの膀胱には少しずつ大小のおびただしい結石が溜まっていたのだった。
もともとダルメシアンは膀胱結石の出来やすい犬種だとブリーダーからも注意を受けて、それなりの対処もしていた。尿を薄く保つためにドックフードはぬ
るま湯でひたひたにして食べさせ、水分をいつも多めに与えていた。それに兆候としての血尿も排尿障害も見られなかったのだから気付くべくも無い。それゆえ私達は年相応に衰えたがまだ元気なダリアとしか思わずにいた。だがその石は突然動き出し、ダリアの尿路を塞ぎ、尿閉を起こしてしまった。そしてその治療にダリアの心臓は耐える事が出来なかった。
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その日は日曜日で朝からダリアは元気良く夫と散歩に行って来た。
「いつもよりも遠くまで歩いて行けたよ」と夫は言ったし、私は「まだまだ元気だね。」と答えダリアの頭を両手でこすりながら笑った。ダリアの白濁した両目も私を見つめ返してくれた。
2年位前から、ダリアは足腰が弱くなり始め良く転ぶようになっていた。今年になってからは時々腰を抜かして立てなくなる事もあった。寝ていて起きようとすると後足に力が入らず立てなくなり「ヒーヒー」と悲しい甘えるような声で私達に助けを求める。
「こうやって日々衰えて行き、今はまだ助け起こせば立てるのだが、その内に寝たきりとかになるのだろうか、、、」と覚悟もしたし、寝たきりになったらちゃんと介護してあげようと決心だってしていた。
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そんな来たるべき老犬介護に向けて、ネットのペット介護グッズのサイトを見ていた時、私は介護補助用の犬用ベストを見つけた。それはベストのように犬に着せて使う物で、ベストの背中部分にバックのように持ち手がついて商品だった。犬が置き上がれない時に持ち手を引いてあげて介助してあげるためのベストだった。結構な値段がついていたのだが、ダリアの為だと思うと財布の紐もゆるくなった。
そのベストがその日曜日に届いた。散歩から帰ったダリアに着せてみる。サイズもきちんと吟味して購入申し込みをしていたので、ぴったりだった。さっそくダリアはいつものように腰を抜かし、ヒーヒーと鳴く。ベストの持ち手を持ち上げ助け起こしてみた。スムーズだった。いつもは助け起こす私達にも力とコツが必要だったのだが、これを着せておけばダリアも足をばたばたさせずに楽に置きあがれる様子だった。私は良い買い物をしたと満足だった。
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だが今思えばあのベストが膀胱を圧迫したのだろうか。おとなしく膀胱に沈んでいた石を押し上げ動かし尿道に押し流したのかもしれない。今となってはただの憶測だが、ベストを着せた直後に尿が全く出なくなりトイレを往復して痛がっていたダリアを考えると関係が無いとは思えない。私のした余計な事がダリアの寿命を縮めたのかもしれなかった。介護用ベストを商品としてとやかく言うつもりはない。あれは良い商品だと思う。ただダリアの場合は膀胱の石を動かしてしまったという不運な影響があったのかもしれなかっただけだ。
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