デリーへ戻る
デリー行きの列車が出る時間の50分前くらいに私達は駅に戻って来ていました。
もし、クロークサービスの窓口が混んでいたりしたら荷物を受け取るのに
手間取る可能性もある事を考慮に入れたからです。
しかしそれも杞憂。
荷物はすぐ受け取る事が出来、私達は列車のホームを探しました。
大抵、外国人も多く利用する様な特急列車はあまり入り口から
遠くのホームにはならない様ですね。
今回も一番近いホームにその列車は到着する様でした。

さて、次は車輛と席です。
駅のロビーの一角にそれと思しき紙が張り出されています。
暗くて見ずらい上に、その張り紙の真下に寝転んでいる連中が居て
近くに寄ってみる事も出来ません、、、。
三人で眼を凝らすと,見つかりました。
C3車輛の51.52.53の座席。
やれやれこれでひと安心。
ホームの小綺麗な売店でジュースやお菓子を買ったり、
娘はインドの芸能雑誌を買いたいとホームの本屋に行きました。
すると出発の30分くらい前にその列車がホームに入って来ました。
デラドゥン始発の列車なのでかなり早めにホームに入っているようです。
私達の目の前で停まった車輛はC11、、、
C3車輛は相当前の方の様です。

デラドゥン発デリー行きジャダブデイ・エクスプレス17時発。
5時間45分の旅、、、席に着くとホッとしました。
しかしこれはもう帰途の旅、、、、複雑な寂しさを感じます。
行きと同じく各車両に銃を持った警察官の姿があります。
今まではテロの影の薄いエリアに居たのですが、ここからはテロの脅威に曝される
首都デリーへ続く道のりなのだと再認識しました。

定刻通りに発車すると、行きと同じ様にまずミネラルウォーター、
そして紅茶とポットと軽食が運ばれて来ます。
それからスープとパン。そして2時間後には夕食のお膳が運ばれて来るのです。
前回、アジメールからの帰りには列車に乗る前に食べ過ぎてしまい、
ろくに手をつけられなかった経験をふまえ、今回は間食はしないようにしていましたので
列車の中のこれらの食事も結構食べられました。

ヘビースモーカーの娘がどうしても我慢出来ない!と言うので
有る停車駅でホームにタバコを吸いに行きました。
たった2分ほどの停車時間なので、私は何度も止める様に言ったのですが、、、
「ひと吸いでもいいから、してくる!」と言って娘は席を立ちました。
「乗り遅れないでよ〜」と娘の背中に叫ぶ母でした。
しかし、2分後、列車が走り出しても娘は席に戻りません。
えーーーっ、、、
と嫌な思いでデッキの方を見ると娘が笑いながら誰かと話しているのが見えます。
よしよし、乗り遅れてはいないようだ、と判ると後は放って置きました。
しばらくして娘は笑いながら戻って来ました。
理由はこうです。
一服しようとホームに降りた娘の後に一人のおじさんがやはり手にタバコの箱を
持って降りて来たそうです。
タバコか、、とお互い顔を見あわせてニヤリ。
火をつけると間もなく列車が動き出したので、慌てて飛び乗る娘とおじさん。
しかし手には火のついたタバコ、、、
インドの列車のデッキはドアを開けっ放しで走るのでかなり風が通ります。
そこでおじさんは「いいよ、いいよ。デッキで吸っちゃおう。」と言ったので
そのまま吸っていると、例の銃を持った警官が通り、ジロリと見られたそうです。
さすがに娘は持っていた携帯灰皿に入れようとした所、
おじさんはその警官にタバコの箱を差し出して「どう?」と言うと、
警官はニッコリ笑って1本取りました。
そこで、すかさず娘はライターでシュボッと火を付けてあげたとか、、、、
仲良く3人でデッキで一服していたらしいです。
おいおい、、。
インドでも最近は喫煙に対する規制が厳しくなって来てはいます。
いつまでもこうではいられないのでしょうが、こういうインド的曖昧さが
消え去ってしまったら、それはそれで寂しい事です。

車窓から
途中、サハランプールという駅で列車は反対方向に走り出します。
今まで前向きだった座席がここからは後ろ向きに走り出すのです。
そのポイントの切り替えに要する時間なのか、ここでは約20分間停車します。
娘もここで一服すれば良かったのに、、と思いました。

今度は私の一服タイム。
暗いサハランプール駅のホームに降り立ち、遠慮してちょっと脇の方で煙草に火をつけます。
頼りない灯に照らされて行き交う人々。電灯に群がるおびただしい数の虫。
そんな風景を見ながら吐き出す白い煙が真っ黒い空に消えて行きます。
私、、いい歳してなんでこんな異世界でタバコ吸ってるんだろ、、、
と可笑しさが込み上げて来るのです。
停車中に列車のメンテナンスをしていたおじさんが「タバコくれない」的な
笑顔で近づいて来ました。
あげるとニッコリ微笑んで去って行きました。
私、、お金をせびってくる物乞いには絶対上げたくないんだけれど、
こういうタバコをせびってくる人に上げるのは全然嫌じゃないんですよね。

再び動き出した列車は真の暗闇の中を大きな音を立ててひた走ります。
街灯一つ見えない場所は本当に暗闇です。
そして時折見える民家から漏れている光もとても弱々しく微かなものです。
それでも都会デリーが近づくに連れて幹線道路を走る車のヘッドライトや
広告塔などの灯りが見え始めます。
見慣れた都会の夜の風景に戻りつつありました。

ニューデリー駅に着くとホームは煌々と明るく、ホームに座る人、寝る人と、
大勢の人々でごったがえし、深夜とは思えない位賑やかなのでした。
各方面への列車の到着を告げるけたたましいアナウンスも鳴り響き、
堂々と群れて闊歩している犬達とすれ違ったりもします。
私達はバハルガンジ方面の出口に向けて歩き出しました。
例によって群がってくるタクシーの客引きをガン無視しながら、、、

