リシュケシュ
ハリドワールからリシュケシュまでは車で1時間程の距離です。
バスで移動すれば安上がりには違いないのですが、
連日の濃〜いハリドワールの町歩きと暑さに参っていた私達は
タクシーで行く事に躊躇はしませんでした。
ホテル・ハリガンガのフロントで車を手配してもらい、車乗り場まで
ホテルのリキシャーで送ってもらったのでした。
車はどこかの旅行社の車らしくドライバー君の英語もなかなか聞き取り易くて
運転もそれ程乱暴ではなく合格です。
走り出してしばし会話。
「何処から来たの?」
これは誰からも聞かれる事。
「日本」と答えると相手の反応はいつも悪くはない。
インド人の対日感情はとても良好なのです。
橋の上から
「リシュケシュで何処に泊るの?」と聞かれ、
私は内心「来た!」と思いました。
自分達のマージンの貰えるホテルに私達を連れて行く気なのだなぁー、と。
ホテルはまあ、どこでもいいのですが、、、
「ラクシュマンジュラー橋の至近でエアコンとバルコニーがあって
お湯の出るホテルが良いんだけど、、。」と伝えると
「よし、まかせておけ。そう云うホテルがあるよ。」と彼。
インドの場合、相手が請け合っても決してその通りではない事の方が常なので、
「まずはお部屋を見てからね。」と私が言うとそれでOKだと言いいました。
程なく車はリシュケシュの町に入りました。
舗装が悪くて凸凹している市街の道路をラクシュマンジュラー橋へと向かいます。
この橋は町の外れにある感じで、中心街のゴミゴミした所を抜けて行きます。
彼はラクシュマンジュラー橋を通り過ぎてなおも坂を上って行こうとします。
「ちょっと! 橋から離れて行くよ?」と私が言うと
彼は「ホテルはここの坂を登った所だから。ずぐだから。」と言います。
やっぱりそうだったか、、、、、
車で坂をちょっと登ると徒歩ではどの位離れてしまうのか考えていない様です。
「やっぱりあなたの言うホテルは橋から遠いみたいだから、いいわ。
橋の所で下ろしてちょうだい。」と言うと
彼は露骨に悲しそうな顔をして「OK、、、」と言いました。
おやおや、素直だわ。手強いインド人なら、とにかく部屋を見ろ、とか
安くするから、とか食い下がってくるはずなのに、
あっさり「OK」と言うなんて、、、。
思わず「ごめんね。」と言ってしまいました。
「いや、いいよ。橋まで行くよ」ってドライバー君。
良い奴だったね。

ラクシュマンジュラー橋の直前までは車が入れないので
橋の上のロータリーで私達は車を降りました。
ここからは重いリュックを担いで宿探しです、、。
今日も暑い! 頑張ろう。
ドライバー君にはここまでの車代とチップを100Rs渡しました。
ちょっとあげ過ぎかとも思ったけど、彼の勧めるホテルを断ったので
なんかちょっと気の毒に思ってしまう私はお人好し、、、。
彼はニッコリ笑って貰ったチップを胸に当てました。
これはインド人の感謝のポーズ。
もししつこくホテルを薦めて来たらびた一文やらないつもりでいたので
ある意味彼は賢いのかもね。
車と別れてリュックを背負って橋へと続く階段を降りようとするも、
階段は人間で大渋滞、、。
前の人達が全然降りて行かないから進まないのでした。
しかし、その理由もすぐに判りました。
階段の中段に牛が突っ立っていたのでした、、、。
牛渋滞。
ラクシュマンジュラー。
その有名な吊り橋は、灰の混じった様なカーキ色のガンジス河にかかる長い橋。
河は深い緑色の山々に挟まれています。
川面を渡る風は、刺す様な日差しの中でもひんやりと涼やかで何とも気持ちいいのでした。
「すごい所だね。」と娘が後ろで呟いていました。
本当に、はじめて渡るこの橋の風景は重たいリュックを背負っている身にも
その重さを感じなくさせるに充分な光景でした。

おっと見蕩れている暇はないよ〜
まずホテルに落ち着かなくちゃ。
橋を渡って右に折れると何軒かホテルが有る事はLoneryPlanetで調べて
判っていたのでそっちの方へ。
するとすぐにジャイプールインというホテルを発見。
ここもたしかLoneryPlanetに紹介されていたっけ、と飛び込んでみました。
バザールの喧噪の中、2階へと続く狭い階段の上がホテルのフロントでした。
部屋は空いていました。
「バルコニー付きが良い」と言うと
「残念だけどバルコニー付きの部屋はフルだ。」とフロントのお兄ちゃんは言うのでした。
まあ、、では取りあえず部屋を見せて、と最初に見せられた部屋は酷いものでした。
窓はあるもののすぐに隣の建物だったり、裏の土地の斜面しか見えません。
「ここしか空いてないの?」と聞くと「そうだ。」と言います。
リシュケシュまで来て何が楽しくて裏山の斜面見てなくちゃいけないの!?
「じゃあ、別のホテルに行ってみるわ。」と言うと
ボーイは「ちょっと待て。」と言い、何やらフロントの兄ちゃんと話し合っています。
そして「ここはどうだ。」と別の部屋に私達を連れて行ったのですが
そこはフロントのすぐ近くの2階の部屋。
狭いながらも商店街を見下ろすバルコニーが付いているではありませんか。
部屋のバルコニー
「さっき、、バルコニー付きはフルって言ったじゃん。」と日本語で文句を垂れる私。
この部屋の何が気に入ったってバルコニーから見下ろす通りとホテルの看板の
何とも裏ぶれた雰囲気、、。
人々の喧噪、音楽、クラクション、寺院からの鐘の音、、、
窓を閉め切ってもしみ込んで来るそれらの音がかえって心地よいのです。
ここで一泊3人で約3000円。
ハリドワールでちょっといいホテルだったからリシュケシュは
この位がちょうどいいのかもしれなのです。

ホテル・ジャイプールインのレストランは最上階のオープンエア。
さっそくそこへ昼食を取りに行きました。
さすがルーフトップ、眺望はなかなかのものでした。
ラクシュマンジュラー橋は眼と鼻の先、ちょうどこの辺りで湾曲している
ガンジスの流れも見渡す事が出来ます。
ドイツ人の10人くらいのグループと一緒になりましたが、
本当にヨーロッパ人というのは大勢でもあまりうるさくないのが助かりました。

食後はラクシュマンジュラー橋周辺を散策です。
強い日差し、高い気温と湿度、、、。
しばらく歩くともう水分が欲しくなって橋のたもとのカフェに入りました。
ここはハリドワールと違い外国人がとても多いエリアです。
欧米人やコリアンで賑わうカフェはほぼ満席状態でした。
外国人が多い分、この周辺はお土産物屋や宝石アクセサリーショップ、ネットカフェや両替屋、
本屋などが多く、ぶらぶらしていてもなかなか楽しいのです。
外国人が多い理由はここが有名な「ヨガ修行の地」だからかもしれません。
(私はヨガは無理、、、、)
外国人が多いリシュケシュ、それでも一番多いのはインド国内からの観光客です。
不思議とインド人観光客は私達によく話しかけて来るだけでなく、
一緒に写真を撮って欲しい等とせがまれたりするのが何とも微笑ましいです。
ターバンを巻いたシークのグループにも握手を求めれられたり、写真を撮ったりしました。
娘はショッピングが大好き。
ひどい時は1軒の店で1時間近く値切り交渉したりするのでまいりました、、、、
そうこうしている内にガンジス河に傾いた夕日が射して来て何とも美しい事。
ここも本当に絵になる場所なのでした。

日が暮れてしまうと、町は真の暗闇に包囲されてしまう夜のリシュケシュです。
どんどん暗くなるバザールの通りに寂しさと不安が少しよぎったりします。

ホテルのルーフトップレストランから見下ろす暗い町。
頼りない灯りに照らされている黒いガンジス。
夜のガンジスは本当に底無しにDeepRiverに見えます。
とうとうと豊富な水量をたたえて,
止めどなく流れて行く様がどこか恐ろしいくらいでした。
この河の夜の佇まいを眺め続けている事はどこか体にも心にも
良くない様な気すらしてくる、、、、
考えが暗い方へ、悪い方へ流されて行きそうになりました。
旅行の疲れが溜まって来ていたのかもしれません。
自分は何でこんな遠くまで来てしまったのだろう,,,,
とか取り留めも無い事すら思い始めていました、、、
今、ここに、インドに居る自分を可笑しくさえ感じたりね、、、
自分よりも、もっともっと長い旅をする人達の心は
どう変化したり停滞したりするのでしょうか。

放浪、漂流、流転。
そういう普段の自分とはかけ離れた言葉が少しだけ身近になって、
憧れと畏怖を感じるのです。
そうなれたらどんなに自由か、、、
そうなれたらどんなに恐ろしいか、、、、
日本での自分の日常とはかけ離れた世界で、
放浪、漂流、流転。
そういうモノに近い気分を味わってセンチになっていたのだと思いますが、、、。
とても深くて果てしなく見える夜のガンジス。
そういう夜は熱いシャワーを浴びてさっぱりして、
固いベットでごわごわの毛布を被って就寝です。

翌日のリシュケシュ。
6時頃に眼を覚ましてしまいベランダに出てみると外気はとても冷たく,
清々しく澄み切っていました。
ガンジスは昨日と同じ様に静かに勢いよく流れています。
牛糞と人の汗とスパイスの匂いが混じり合うインドの空気を清々しく感じてしまうなんて、、、
朝とは何処に居ても清々しいものなんですよね。
この日はリシュケシュ駅の方にあるトリヴェニガードという沐浴場に行ってみようと思い、
ホテルのフロント兄ちゃんにリキシャを捕まえられる場所を聞きました。
なぜなら他の町ではあれほど煩わしくまとわりつかれるリキシャーを
このエリアでは全く見かけないからでした。
フロント兄ちゃんは橋の向こう側のロータリーまで行けば捕まえられるよ、
と言うのでした。
私達がハリドワールからの車と別れた辺りの事でした。
しかし、そこまで歩いて行ってみてもリキシャーの姿はありません。
リキシャーの居ない町は不便だなぁ、と嘆く事しきり、、。
そこで仕方なくもう少し幹線道路の方まで歩いて行ってみたのですが
日は高く上がりジリジリと照りつけて気温もぐんぐん上昇。
大きな駐車場の辺りまで行ってみてもリキシャーが居ないので、
とうとう諦めた私達はショッピングしながら来た道を引き返し始めました。
結局その日もショッピング三昧、、、なのでした。

昼食はホテルの近くのガンガ・ビーチ・レストランという店に入りました。
吊り橋を渡っている時に眼下に見える店で、
河を見渡せる眺めのいい店のようだったからです。
この店も長期滞在中の欧米人が沢山います。
しかし、、、料理の味はイマイチ。
注文したフライドライスはソースビチャビチャで塩分高めでしかもオイリー。
こんな料理をよく平気で食べていますね〜欧米人の皆さん。
しかし、こういう料理をバクバク食べられないとハードな旅は続けられないんだろうなぁ、
と納得と尊敬の眼差しですよ。
唯一ここで美味しかったのはバナナラッシー。
これはバナナ濃厚で甘くて美味しかったのでした。
ホテルに帰ってから考えていました。
そろそろリシュケシュからムスーリーまでの移動方法をホテルのフロント兄ちゃんに
相談してみた方がいいかな〜と。
フロント兄ちゃん曰く、バスはリシュケシュの中心部のバスステーションから出ているけど、
デラドゥンという町で乗り換えて行く事になるだろうと、、。
体力的にも面倒だな、、、とついまた車をチャーターしてしまいました。
ホテルの兄ちゃんは色々聞いて来ます。
「車は大きい方がいいか、小さくていいか?」
「大きい方がいいなー。小さいと3人じゃ窮屈だし、、、」と私。
「A/Cはどうする?」
「A/Cは無いと暑い日だったら辛いわ。」
とつい贅沢な注文をしてしまいました、、、。
フロント兄ちゃんは知り合いのツーリストオフィスに頼んでみるから
金額は後で聞いて知らせてくれる、との事。
「じゃ、後でね。よろしく。」とフロントを後にして
また町中をぶらぶら、、、
狭いこのエリアのお店はもう見尽くした感がありました。
同じ店に入ると店員が
「ハロー、また来たね。」みたいな顔をするし、そろそろ移動したくはなっていました。

夕刻、フロントを通った時に兄ちゃんに
「車の費用はいくらになるか判った?」と聞いた時の彼のリアクションは
とても判り易いものでした。
「あっ!!、、、、 あとで部屋に知らせに行くよ。(ニッコリ)」
おいおいおい、、、忘れてたな〜。バレバレだぞ〜と心の中で吐き捨てて
一旦部屋に帰りました。
うーん。頼りない、、、あいつに頼んだのは失敗だったのかもしれない、、、
バザールには普通にツーリストオフィスが何軒が並んでいたのだから、そこで頼めば良かった、、、
と後悔しはじめた頃、部屋のブザーがなりました。
フロント兄ちゃんでした。
「値段は2000Rsかかるけどいいかい?」
2000か、、、、高いけど一人頭にすれば670RsくらいだしOKだわ、と思い直しました。
「OK、じゃ、それで予約して下さい」とお返事しました。
すると20分後くらいにまた部屋のブザーが。
「車はホテル前には来れないから、橋向こうのロータリーで待ってる、、
それでいいか?」って
「OK、No plobrem.」と答えると微笑んで帰って行く兄ちゃん。
するとまたしばらくして部屋のブザー、、、。
今度は何?とドアを開けると
「車は目印にホテルの名前、ジャイプールインと書いた紙をフロントガラスに張ってあるから。
それを目印に見つけ出せよ。
日本人の名前は難しくて書けないよ。」との事。
「OK. I see、」と私。
色々と、要領は悪いなりに頑張ってくれているんですよね。フロント兄ちゃん。
まあ、どうせ2000Rsは彼へのマージンも入っての金額でしょうから
特にチップはあげませんでしたけど、彼はなかなか良いキャラでした。
チェックアウトの朝もホテル代のレシートはくれたけど
彼に支払った車代のレシートをくれないので、
私がちょっとごねるとちょっと困った顔していました。
だってレシート無いと困るじゃないですか。
もしムスーリーに着いてから車代を「払った!」「貰ってない!」の言い争いになったりしたら、、、、
その様にフロント兄ちゃんに説明すると自分の携帯の番号を書いたメモを私に手渡し
「心配するな。何か有ったらここに電話しろ。俺がなんとかするから。
どうか信用して欲しい。」、、、、だって。
うーん。そう言われても、、、、、。
でも、まあいいや。
もしムスーリーに着いてドライバーが「貰ってない。」と言って来たとしても
断固払わなけりゃいいだけの事だ、、と思い直して、
「判った。色々有り難う」と彼と笑顔で握手とハグを交わしたのでありました。
ホテルのスタッフ
車は何の問題も無く約束の時間に約束の場所で私達を待っていたし
大きなトヨタ・クオリスでエアコン付き。
運転手のおっちゃんもいい人でしたし、割と安全運転。
何よりも無事に快適にムスーリーに到着したのですから、
フロント兄ちゃん「Good job !」だった訳でした。

